大阪の年金相談・就業規則作成・助成金申請などお任せください 年金保険・労務管理ジャーナル 第1号

厚生年金基金資産損失問題について

 

平成24年2月に発覚した、投資顧問会社による厚生年金基金や企業年金基金の資産損失事件はいまだに総額が確定できないほど被害は大きい。平成23年9月末現在で判明しているだけで合計約2100億円あった84基金との契約資産の大半を毀損させたことが報じられている。この額は、平成21年度の厚生年金基金・老齢年金給付額である約1兆5480億円の13%に相当し、また平成21年度の607基金総資産額である約18兆4000億円の1%に達するものだ。

厚生年金基金などの企業年金は、会社などの民間企業を退職した人たちにとっては老後の重要な収入である。公的年金である老齢基礎年金を1階部分に老齢厚生年金を2階部分に、そして企業年金を3階部分にたとえて呼ばれるが、公的年金の受給権がなくても厚生年金基金などの企業年金は1カ月でも加入していれば終身支給される。その年金給付の資金は現役の加入者や事業主が負担する保険料だけで不足する場合には、年金基金が蓄えていた積立金を取り崩して充てる。公的年金のように税金を充てる国庫負担のようなしくみはない。そのため、資金の運用を任されている投資顧問会社や証券会社や信託銀行などは慎重に行わなければならない。

今回発覚した事件の当事者は、投資の内容を顧客である年金基金側に開示せず、発生した損失を穴埋めするために他の年金基金に資金運用を持ちかけるなどして被害を拡大していった。資金運用の指示をする役割の投資顧問会社の責任者が運用の知識や経験が乏しく、実際に運用をするはずの証券会社や信託銀行は部外者に資金を渡していただけだったとは怒りを通り越してあきれてしまう。

今後同様な事件を繰り返さないためには、年金基金には資金運用に通じた人材を置くようにする仕組みを設けることが急務だ。そして加入者や事業主また企業年金受給者も他人任せにばかりしない「もの言う負担者や受益者」として意識や関心を持ち意見を述べる姿勢を示すべきではなかろうか。